捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「家と家を繋ぐため、宮成商事のため、黙って嫁ぐのが私の仕事だと思っていました。だけど、結婚に失敗して考えが変わりました。自分の力で歩こうとしないと、未来は引き寄せられない。流されるままでは幸せになれない」
「……俺が幸せにすると言っても?」

そう微笑み返した奏士さんは、もうすっかり私のことを理解した顔をしていた。
私の気持ちを、この優しい人は汲んでくれる。だからこそ、私は力強く答えた。

「日本で、宮成商事で、しばらくは一生懸命仕事に取り組んでみようと思います。ひとりの人間として自立したい。父の会社ではありますが、今まで諦めてきたことをやってみたいんです」

女性は嫁いで幸せになるという一族の価値観の中で生きてきた。そのため、できることの多くを見逃してきた気がする。
仕事もそうだ。後継者の由朗を差し置いて頑張ってはいけないと思ってきた。でも、それは由朗に失礼なことだと今更に気づいた。由朗はそんなに弱くない。

「それに、今までしてこなかったことも、チャレンジしたいんです」
「たとえば?」

奏士さんが楽しそうに聞き返してくれる。私は胸を張って答えた。

「筋トレとか、デカ盛りメニュー挑戦とか、登山とか。旅行もしてみたいです、ヨーロッパやアメリカは家族旅行で行ったことがありますけど、アジア諸国やアフリカ大陸には行ったことがないので」

私の宣言に、奏士さんが声をあげて笑った。

「里花って結構アクティブだったんだね」
「家に閉じこもりの生活をしていたもので。反動ですかね」
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