不条理なわたしたち
「蓮水さんがいてくれて良かったです」

お礼を伝えた次の瞬間、何故か景色がグルンと反転した。

背中がつくと私は目をパチクリ瞬かせた。

だって蓮水さんにベッドへと押し倒された。

仄暗い中、私をじっと見下ろす蓮水さん。

その双眸が微かに妖艶に見えて。

ドキッと心臓が飛び跳ねる。


「は、蓮水さん?」


呼び掛けると、変に声が掠れた。

蓮水さんは私を見たまま。

蓮水さんは何も言わずに、私の唇に触れる。

鼓動は苦しいほど暴れる。

魔法にかかったみたいに、目の前の双眸から目を逸らせない。

動けないでいると、蓮水さんが顔を傾けながら私に近付いてくる。

蓮水さんはそのまま私の唇に自分の唇を重ねた。

そこで漸くハッとした。
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