不条理なわたしたち
私はスマホの画面を覗くと一つのタイトルに目を留めた。

「これ、面白そうだなって思っていたんです」

私が指を差したのは、洋画のサスペンス。
全米では初登場一位を獲った話題作だ。
CMで見かけたときから実は気になっていた。

「面白そうだね。それにしよう」

蓮水さんは笑顔で私に同調してくれたが、私は少し眉を寄せる。

「本当に良いですか?私に譲ろうとか考えてません?」

蓮水さんは赤ちゃんのことも私の意見を尊重すると言ったから、今回も譲ろうと思っているのかもしれないから。
本音を引き出そうとじいっと蓮水さんを見つめていると、蓮水さんがフッと顔を崩した。

「葵ちゃんが観たいものは俺も観てみたいし、なにより葵ちゃんが楽しんでる姿を見たいんだ」

眩い微笑みと甘いお言葉を頂戴したら、もう何も言えなくなった。

この人、生粋のフェミニストだ。
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