不条理なわたしたち
「葵ちゃん、何を食べたい？」

赤ちゃんを見入っていたら、蓮水さんの声が飛んできて肩をビクつかせてしまった。

「和食が食べたいです。蓮水さんはどうですか？」

赤ちゃんを見ていたことがバレたくなくて、私は笑顔で誤魔化した。

赤ちゃんの話題から逃げようとしてる私は本当にズルいが、目の前の蓮水さんの曇っていく表情が気になってしまった。

「葵ちゃんは和食の方が好きだった？」

問い掛ける前に出てきた言葉に、蓮水さんの不安げな表情の意味が分かった。
実は蓮水さんの家に来てから毎日初日のような見たこともない洋食だった。
こってりとした料理が続いていたから、あっさりした食べ慣れた味が恋しくなった。
だから先程の発言も普段和食寄りの食事をしている私の心からの答えだ。
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