不条理なわたしたち
明るくなっている室内を見渡すが、彼は見当たらない。
部屋には静寂しかない。

その代わりにベッドの横の照明が置かれているボードにメモがある事に気付いた。


『仕事があるから行ってくるね。シャワーとか家のものは勝手に使って良いから。オートロックだからそのまま家を出てもらえば良いよ。連絡待ってる。 090-××××-××××』


そこには達筆な字で書かれていた。

もう一度、辺りを見渡した。
昨日は暗かったし、酔っ払っていたし、泣いていたから気付かなかった。

広い部屋に広いベッド。

本当に大きい。
私のシングルベッドの倍はある。

そのベッドの隅に私の服が畳んで置いてあるのを見つけて服を着た。

服を着るとベルガモットの香りを強く感じた。
蓮水さんの香りが私の服に完全に染み付いている。

落ち着かなくて、見当たらないジャケットとコートと鞄を探すために扉を開けた。

私は驚いてしまった。
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