不条理なわたしたち
確かに飲みすぎて、身体に力が入らなくなってきた。
カウンターのテーブルに両肘をついて一五五センチの小柄な身体を預けている状態だ。

「今日はやけ酒ですよ!付き合って下さいよ!」

マスターは眉をずっと下げているが、酔っ払いの私は気付かない。

花の金曜日、今日はとことん飲み明かしてやるんだ。


「久しぶりだね。どうしたの、葵ちゃん」

そこに入り込んできた落ち着いた低い声に私は勢いよく振り返る。


耳と頸を隠している長めの黒髪。
切長の二重の目、通った高い鼻筋、形の良いセクシーな唇。
一八〇センチ以上はありそうな長身を引き立たせる仕立ての良さそうなグレーのスーツ。

いつぶりかははっきりと覚えていないが、おそらく一ヶ月半は会っていない。

でも久々に見ても、彼はやっぱり麗しい。


「蓮水さんて、いつ見てもイケメン」

酔っ払っているせいで、いつも心で思っていた言葉が漏れたが、酔っ払いの私は全く気付いていない。

私の言葉に蓮水さんは口元に手を添えながらクスクス笑う。
そんな仕草すらセクシー。
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