不条理なわたしたち
「髪色変えたんだね」

「はい。気分転換に」

あの次の日、私は美容院に行って髪を黒に戻した。

昔は真っ黒な髪が幼くみえて嫌だった。
だから好きだった隼斗君に勧められて、似合うと褒められて、茶色の髪をキープし続けていた。

でも今は根本の色を気にする必要も無いし、この髪なら隼斗君を思い出すことも無いから戻して正解だったし、なにより自然体で居られる方が楽だ。

「そっちの方が似合うよ」

社交辞令だろうが、私は嬉しくなって「ありがとうございます」と返した。

「何飲む?ファジーネーブル?」

マスターが訊いた。

それは私がいつも一番最初に飲む好きなカクテルだ。
二ヶ月も来ていなかったのに覚えていることに嬉しくなった。
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