不条理なわたしたち
橙色の飲み物がコースターの上に置かれた。
おそらく目の前にはオレンジジュースだろう。

「記憶からは抹消して下さい」

「ビデオに撮っとくべきだったな」

「マスター!」

「ハハッ。ごめんごめん」

マスターは壁側についているコンロで私のそばめしを作り始めた。

私はまだ肝心なことを訊いていない。
変に喉が渇いて、私はぐびっと一口オレンジジュースを飲むと握り拳を作って口を開く。

「あ、あの、蓮水さんて、最近来ました?」

「来てるよ。ほぼ毎日」

蓮水さんてそんな常連さんだったんだ。
でもそれならすぐに会えそうだ。

会えなかったらどうしようかと不安だったが安心した。

暫くするとソースの香ばしい匂いが鼻腔に届いてきた。
食欲をそそられる。
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