不条理なわたしたち
五分後、目の前に置かれたそばめし。

喉とお腹が鳴った。


暫くマスターとの会話を楽しみながら食べていた。
この前雪が降ったねとか、他愛もない会話をマスターが投げてくれた。


「ご馳走様でした」

十五分後、そばめしを綺麗に平らげて手を合わせた時だった。


『カランカラン……』


お店の扉の上についたベルの音が客人を知らせた。

顔を向けるとそこにはスーツ姿の蓮水さんが居た。
二か月前と違うのはロングコートが増えていること。

二ヶ月振りの彼は相変わらず艶麗で、私の鼓動は早鐘を打った。

蓮水さんは私を見ると、私を見たまま、私の方へと一直線に向かってくる。
< 29 / 120 >

この作品をシェア

pagetop