不条理なわたしたち
そのまま私の前のテーブルに左手、座っている椅子に右手を置いた。


「連絡、ずっと待ってたんだ」


私は蓮水さんの真剣な顔よりも、息を切らせ、一月下旬だというのに汗が滲んでいる顔が気になってしまった。


数秒後、漂ってきたベルガモットの香りに二ヶ月前を思い出し、ドクンと心臓が高鳴った。

今はドキドキしている場合じゃないと気持ちを切り換えるために私は彼から顔を逸らした。


「蓮水さん、お話があります。出来れば隅で」

私は一番端の席を指差した。

「そうだね。ゆっくり話をしよう」

蓮水さんはにっこり微笑んで答えた。
その後すぐにマスターに「飲み物は落ち着いてから頼むよ」と言った。

私は覚悟を決めて飲み物を一口飲むと、立ち上がり、緊張しながら奥の席へと向かう。
自分を落ち着かせようと席に着くとフーっと息を吐いた。
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