不条理なわたしたち
「葵ちゃん、髪色変えたんだね。似合うけど……それよりも痩せた?」


席に着いた蓮水さんが最初は笑顔で口を開いたのに、少しずつ眉を顰めて私の顔をじっと見た。

最近食欲が無かった。
仕事に忙殺されていたのと、生理が来ないせいで不安だったから。

マスターは気付かなかったのに。


「まだアイツのこと、引き摺ってるの?」

驚かされて黙っていたら、蓮水さんが苛立ったような細い目と低い声を私に向けた。


「違います!蓮水さんのお陰ですぐ忘れましたからっ!」

「それなら良かった」

にっこり返されたら、居た堪れなくなる。

その話はもう良い。
すぐにあの話をしたい。
緊張しすぎて、胃がキリキリしてきたから。


「蓮水さん、お、驚かないで聞いて下さい」

彼が衝撃を受けすぎないように、一応念を押すと息を吸い込む。
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