不条理なわたしたち

「おめでとうございます。妊娠してるね。今十週目、三センチくらい」

女医さんに宣告されると私は硬直してしまった。

白黒のモニターには小さな白い影。
これが赤ちゃんらしい。

本当に私のお腹に赤ちゃんが居るのだと実感させられた。

でも嬉しいなんて思えなかった。

「ここは緊急外来だから、近いうちに産婦人科を受診して、保健所で母子手帳を貰ってきてね」

母子手帳……
益々私に現実を突きつけてくる。


病院の診察代は蓮水さんが払った。
先程のタクシー代も払ったというのに。
というより私に払わせてくれない。


「今日から俺の家に来て」

病院から出ると蓮水さんが私に言った。
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