不条理なわたしたち
結局強引にタクシーに乗せられた。
蓮水さんは行きのタクシーも病院でも、静かだった。
誰かに聞かれたくない会話になってしまうから黙っているだけかもしれない。


二十分後、二ヶ月前の蓮水さんのマンションの前にタクシーが停められた。
蓮水さんはマンションの向かい側にあるコンビニで、化粧落としと化粧品セットと歯磨きと私の下着など勝手にカゴに入れていく。

二ヶ月振りの蓮水さんの高層マンション。
もう来ることは無いと思っていたのに。

相変わらずの豪華なエントランスだった。
蓮水さんの家は二十階だった。
この前は気が動転していて、とりあえず下のボタンを押して開いた扉に入っただけだから、階まで確認しなかった。

蓮水さんが玄関を開けると、自動でついた電気。
そんなことにも驚いてしまう。

「こっちがトイレ。その横の扉は洗面所で奥がお風呂」
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