不条理なわたしたち
洗面所の洗面トレイは二つもあるし、お風呂はうちの三倍はある。
蓮水さんは私を捕まえたままお風呂まで入っていき、湯沸かし器のボタンを押した。

「反対側の扉は全部部屋だけど、この部屋以外使ってないから、使いたかったら言ってね」

廊下の奥の部屋以外は使っていないらしい。
それを除いても、あと扉は二つある。

「では私はあちらで寝ます」

私は玄関近くの部屋を指差した。

「ベッドはあの部屋には無いし、君の寝る場所は俺の隣に決まってるから」

蓮水さんは私の言葉を笑顔でサラッと却下した。

「使って良いって言ったじゃないですかー!」

やっぱり私を無視して、あの広いリビングへと私を引っ張って入っていく。


そしてあの日私の荷物が置かれていた大人五人は余裕で座れそうな大きな皮張りのソファに座らされた。
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