不条理なわたしたち
「何か悪いこと、考えてない?」

耳元に届いた声に、ギクっ!と心臓が飛び跳ねた。

「か、考えてませんって!」

「じゃあ、一緒に入ろうか。綺麗に洗ってあげる」

低い艶やかな声が鼓膜を擽る。

鼓動がずっと忙しない。

今までの経験は隼斗君と蓮水さんだけだからかもしれない。

隼斗君も蓮水さんまでとは言わないが長身の方だったし、爽やかな人で一緒に居ると気が落ち着けた。

蓮水さんはそれに比べ、大人の余裕が感じられるのか、近くにいるだけで緊張する。

心臓が苦しくて逃げ出したくなるけれど、でもどこか安心する。

大人の包容力なのだろうか。

なんにせよ、私には蓮水さんの色気は毒のよう。
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