不条理なわたしたち
蓮水さんは五〇〇mlのペットボトルのキャップをカチッと開けると私に差し向けたので、お礼を言って受け取った。

すると蓮水さんは座っていた隣のソファーをポンポンと軽く叩いた。
座れということだろう。
反抗してもどうせ座ることになるだろうな。
数時間で蓮水さんの性格を掴んだ私は、とりあえず腰を下ろした。


「葵ちゃん、婚姻届を記入して欲しい。あと君のご両親に挨拶をしたい」

「ごふっ!」


水を飲んでいた私は思わず咽せた。
蓮水さんは大丈夫?と私の背中を摩る。
口を手の甲で押さえながら口を開く。

「どこから婚姻届が!?」

「今はインターネットから印刷出来ちゃう時代なんだよ」

知らなかったが、それどころではない。

「蓮水さんは本気なんですか!?本当に私と結婚なんて!」

「本気だよ」

笑顔でサラリと言った蓮水さんに私は目は見開いたままだ。
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