不条理なわたしたち
私はどこにでもいるただの平凡な女で、この豪華な住まいから見ても蓮水さんとは絶対に釣り合わないのは誰が見ても明確だから。

「また今日も褒められちゃったね、ありがとう。でも俺は君が良いって言ってる」

そう言った蓮水さんに情熱的にこめかみに温かい唇を押し付けられた。
心臓が痛いほど反応するが、必死に自分を抑えて口を開く。

「さっきも言いましたけど、私達お互いを何も知らないです!」

「身体の相性はバッチリだよ」

蓮水さんはこめかみから今度は首筋へと唇を移し、それを実証するように唇をあててきた。

「ひゃあ!」と私は驚いて声を上げる。

首筋に吸い付いた唇は私の身体に刺激を与えてくる。

首筋に触れる彼の吐息も私の全身をじわじわと熱らせ、喉からは甘ったるい声が這い上がらせる。

抵抗しようと跳ね除けたいけれど、腕に力が出てくれない。

それどころか、いつの間にか再び蓮水さんの腕の中に。
< 51 / 120 >

この作品をシェア

pagetop