不条理なわたしたち
このままじゃ蓮水さんのペース。
あの日と同じだ。

なんとか理性をフル稼働させて、両手を彼の胸に置いて突っ張って必死の抵抗。


「ちょっと待って下さい!蓮水さんの下の名前すら知らないのに結婚だなんて無理ですっ!」

だってフルネームすら知らない人と、結婚を決められる人間はいるわけがない。


「そっか、教えていなかったか。ユウダイだよ」

蓮水さんはハッと少し目を開くと、私の髪をやっと解放し、そう言いながら紙に名前を書いた。

『蓮水侑大』

そんな字なんだねと思ったのは束の間、他のことに驚いてしまう。

蓮水さんが書いた紙にだ。

これ、婚姻届。

しかもちゃっかり夫の欄に記入している。
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