不条理なわたしたち
「家、引き払って俺の所に来るべきだよ。アイツとの思い出とかもあるでしょ?」

住所を入力すると蓮水さんが言った。

「心配はご無用です。あの後引っ越しましたし、彼から貰った物は全部処分しましたから」

私はシートベルトを締めながら毅然とした口調で言った。

「そうか」

蓮水さんは満足げに目を細めるとハンドルを握った。

「これからは俺の家に住むんだから、要る物は運び出そうね」

車が発進すると思ったのに、発進する前に逃げ出したい会話を投げられた。

私は口を引き結び、視線を彷徨わせることしか出来ない。

そんな逃げ腰の私の右肩を蓮水さんに掴まれた。
私は反射的に彼を見る。


「葵ちゃん、覚悟を決めて。俺は君と子供の居る未来を心待ちにしてるよ」

真摯な言葉。

でも私は目を伏せる。
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