不条理なわたしたち
だって昨日の今日だ。
それに私達は恋愛をしたわけじゃない。
決断なんて出来るわけがない。

黙ったままいると、パッと蓮水さんの手が離れていった。

「昨日の今日だもんね。少しずつ行こう。急かしすぎたよ」




三十分後、私の家に着いた。
外で待っていてと頼んだが、蓮水さんは部屋まで付いてきた。

「ここが葵ちゃんの部屋……」

蓮水さんは私の十畳のワンルームの部屋を見ながら呆然と立ち尽くしていた。
あんな大きな部屋に住んでいたら、カルチャーショックを受けるのも無理はない。

「……だから見せたくなかったんです」

私は口を尖らせる。

「ケーキのクッションが葵ちゃんっぽいよ」

蓮水さんがベッドの上の苺のケーキのクッションを見ながらクスリと笑う。
それは子供っぽいってことですかね。

「葵ちゃん、荷物を纏めて」

益々口が鋭く尖っていったところに、蓮水さんがいつの間にか真剣な顔をして言った。
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