不条理なわたしたち
私は洗面所でニットのセーターとスカートに着替えた。
スカートにしたのは診察があるから。
その後はトランクに化粧品と入るだけ服を詰めた。
家具も家電も蓮水さんの家にあるから不要だ。
蓮水さんが苺ケーキのクッションを「これは良いの?」と弄るから持っていくことにした。


これから一緒に住むことになるからと、蓮水さんのマンションの近くの産婦人科に向かうことに。
私をどうにか了承させるつもりだったのだろう。
私も調べてはいなかったから文句は言えないが、蓮水さんは私に病院を選ばせることもさせようとしなかった。
私は告げられた場所に助手席に乗って、ただ向かうだけだから。


今日もお医者さんからおめでとうございますと言われた。
心音も聞こえるらしい。
八ヶ月後の九月に産まれるらしい。

蓮水さんは医師から差し出された用紙の父親欄に迷うことなく自分の名前を書いた。

今日は赤ちゃんのエコー写真を貰った。
頭と胴体に短い手足らしきものがついた小さい塊。
人間かもよく分からない。
< 60 / 120 >

この作品をシェア

pagetop