不条理なわたしたち
重くなった空気が息苦しくて視線を落としてマグカップを眺めていたら、マグカップがスッと取られた。

「葵ちゃんが俺を好きになってくれれば丸く収まると思うんだ」

蓮水さんはそう言いながらローテーブルに既に置かれていたマグカップの横に、取ったマグカップを並べて置くと私を見た。

「俺のこと、イケメンって言ってくれてるから嫌いでは無いよね?」

自信ありげな顔を向けられ、ドキッと鼓動が飛び跳ねて、私は咄嗟に視線を背けた。

蓮水さんは非の打ち所がないほど外見がとてつもなく良い。
格好良いと思っているのは事実だ。
でも私のそれは、芸能人をキャアキャア騒いで見ている感覚と同じだ。

「……外見だけで結婚は決められません」

「そうだね」

目の前からはクスッと余裕そうな笑い声が聞こえてきた。
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