不条理なわたしたち
「じゃあ今から俺を好きになって」

そう言った蓮水さんに、

「んっ!?」

驚く間もなく唇を塞がれた。

彼の胸板を押すけれどびくともしない。

私の身体の強張りと警戒を解すようにじっくりと時間をかけて優しく啄む。

少し離すと優しく上唇。

次は下唇。

そして私の警戒の気が緩み始めた時、ゆっくり私の口の中に舌を侵入させる。

絡み合う舌が出す水音が私の理性を奪っていく。

この人、本当にキスが上手い。

「二か月、ずっと君が恋しかった」

くぐもった声にドキンと高鳴る鼓動。

あの日も思ったんだ。

鼓動が変になって逃げたくなるのに、蓮水さんの腕の中に閉じ込められると全てを預けたくなる。

目がとろんとして、ぼぉ〜となる……。
< 73 / 120 >

この作品をシェア

pagetop