不条理なわたしたち
理性を保てなくなり始めたその時、服の隙間から侵入してきた指の感触が素肌を滑った。
私は目を見開いて身体を竦めさせるとその手を咄嗟に両手で掴んだ。

「蓮水さん、何して……」

すぐに熱の籠った瞳と視線が交錯した。

「君はどうでも良い男とセックス出来る?」

私の言葉を無視して、蓮水さんが脈絡もなく質問した。

「で、出来ませんけど……」

「だと思うよ。アイツをずっと一途に想う君を見ていたしね。二か月前にアルコールが充分入った身体でもキスしただけで拒まれたし」

蓮水さんは何が言いたいのだろうと彼の瞳を探るとゾクっとした。
獲物を狙うような光る目をしていたから。

「二か月前君を抱けたのはアルコールの力と失恋に付け込んだから。でも今日の君はシラフだ。この状態で君を抱けたら、俺にもチャンスはあるよね?」
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