不条理なわたしたち
結局私は蓮水さんに抱かれてしまった。

でも私は蓮水さんを好きじゃない。

またも流された。

好きでもない男性に身体を許すなんて……。

自分がこんな人間だとは思ってもいなかった。

二か月前は激しかったけれど、今日は本当に優しく抱かれた。
時間をかけて、ゆっくりと。

それにしても蓮水さんは妖艶だった。
思い出しただけでも身体が火照る。
この蠱惑的な身体がいけないんだ。

「葵ちゃん、ボーっとしてどうした?体調悪い?」

蓮水さんに後ろから覗き込まれて、私は身体を竦めた。

「だ、大丈夫です!」

視線を下の水面に向けながら返した。

「それなら良かった。優しくはしたつもりだけど、赤ちゃんに何かあったら心配だからね」

蓮水さんは後ろから私を抱きしめながらお腹を撫でた。
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