不条理なわたしたち
「ひゃあっ!」

首筋をペロッと舐められ、身体が跳ねたせいでパシャと水音が立った。

逃げようとしたら、腰に腕が巻き付いて離してくれない。

その時、首筋にずっと触れたままの唇が突然思い切り吸い付いてきた。

「んっ!」

ピリッとした痛みを感じると口からは声が漏れ、顔が少し歪んだ。

「もう一回したら、好きになってくれるかな?」

首に吐息がかかるとゾクゾクっと身震いした。

このままじゃダメ!


「のぼせそうなので出ます!」

私は勢いよく立ち上がり、バスタブから逃げ出た。


後ろ手でバスルームの扉を閉めると、落ち着こうと頭を横に振った。

危ない、また流されそうだった。
赤ちゃんがいるんだ、真剣に考えないと。
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