最強総長は闇姫の首筋に牙を立てる~紅い月の真実~
「アンタ。この状況でも動じないってことは……」

「な、なに?」


私の正体に気づいた?


もしかして私が闇姫のときに会ってた人?

実は私が倒したヤクザの一人とか。


「男慣れしてんな」

「は?」


「彼氏いるだろアンタ」

「……」


皇綺羅君って思ったより天然なのかしら。


舎弟はいるけど恋人は生まれてこの方できた事がないわ。


「彼氏がいたら女らしい匂いがしてもおかしくねぇか」

「私、彼氏なんていな……」


「俺の嗅覚が鈍ったかと思ったぜ。悪かったな。頭を強引に掴んだりして」

「いえ……」


パッと離してくれた。

けど、私が恋人いない云々は皇綺羅君には聞こえてないみたい。


「それよりさ。アンタのバックの中なんか入ってない?」

「食べ物ってこと?」


「そ」

「チョコなら入ってるわ。どうして?」


「それでいいや。明日、金返すからそのチョコくれないか?」

「これをあげたら授業に出るの?」


「……じゃあ、いらない」


授業に出る気はないみたいだけど、それ以上に空腹なのかしら?

朝ごはんを食べていないから眠いとか?


「チョコはここに置いておくから。もし出る気があったらくればいい。音楽室は3階だから。それとお金はいらないわ」


私はチョコを皇綺羅君の机にソッと置くと、教科書を持って教室を出た。
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