最強総長は闇姫の首筋に牙を立てる~紅い月の真実~
「このくらいなら…。って、どう、して?」


びくともしない。


両手を抑えられても、以前なら簡単に引き剥がせたのに。


「お前の血がほしい」

「これって…」


力のコントロールが上手くいってない?


「しっかりして壱流。私のことがわかる?私は貴方と同じクラスで…」

「お前の血を飲ませろ。
足りない、血がたりない」


「っ……」


だめだ。私の声が届いていない。


壱流は片手でいとも簡単に私の両手をホールドしている。

足で蹴りを入れようとするも、壱流は足でも私の動きを止めている。


私、こんなに弱かった?


……違う。壱流は吸血鬼だから。

その答えで私が勝てないのも納得できる。


闇姫だった当時、私の血を吸血したアイツも吸血鬼だった。

人間の中では最強といわれても、吸血鬼と戦うとなると話はまた別だ。


「壱流。飲んでいい、から」


怖い。私は初めて壱流に恐怖を感じていた。


さっきとは違う。今の壱流は獣そのもの。

目の前にいる私を、ただの食料としか思っていない。


こんな状況で血を渡すのは不本意だけど相手が壱流なら仕方ない。

どんな姿でも壱流は壱流だから。
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