書いてほしい小説アンケート
○第1話シナリオ
【回想、自宅のリビング・夜】
紗彩の斜め右に座る父定彦が項垂れている。
紗彩の母彩乃は顔を両手で覆い、声を圧し殺して泣く。
紗彩は状況が飲み込めない。
紗彩 「お父様、今なんとおっしゃいました?」
定彦「すまない...。本当にすまない」
定彦は事の顛末を語りだす。
【回想 父定彦の病院、医院長室】
コンコンとノックの音が鳴る。
定彦は看護師を中に招き入れる。
定彦「話とはなんだね?」
看護師は手を小刻みに震わせている。
看護師「実は...」
紗彩
〈外科部長だった人が医療ミスを隠蔽し、部下にウソの記録をさせた。
それが発覚したのは1年前のこと。
手術のサポートをしていた看護師が父に密告したんだ。〉
【回想 自宅ダイニング】
彩乃「あなた、大丈夫なの?」
定彦「まぁ、なんとか」
彩乃「でも、あのことはもう大分広まっているんじゃ...」
〈両親の会話を私が耳にした時にはもう手遅れだったのかもしれない。
事件が公になる前から徐々に収益は減少していたものの、曾祖父の代から続く歴史ある病院であるため簡単に潰すことは出来ず、父は大規模リストラをして繋ぎ止めていた〉
【回想 自宅リビング・夜】
紗彩が学校帰りにテレビを付けると、病院の外観が映し出される。
紗彩は身を乗り出す。
アナウンサー
「では次のニュースです。朱鷺田総合病院の医療ミス隠蔽事件の続報です」
紗彩は口をあんぐりと開けながらニュースを見る。
紗彩
〈事件がニュースでも取り上げられてしまったために危険な病院というレッテルを貼られ、私達は世間から白い目で見られるようになった〉
【回想 紗彩自室・夜】
紗彩はスマホで病院の口コミを目にする。
"朱鷺田病院はヤブ医者揃い"
"人殺し病院"
"人殺しておいて隠蔽とかあり得ないでしょ?"
"ミスを隠すとか、ミスを謝れないとか、人間として終わってるw"
紗彩〈裏サイトやSNSでもその事実が囁かれ、患者が来なくなった上に、入院している人からも転院したいと言われるようになった。
そして今から1ヶ月前...〉
【回想 自宅リビング、最初の場面と同じ】
「すまない...。本当にすまない...」
紗彩
〈遂に廃業。それから生粋のお嬢様だった私の生活は一変した〉
【回想 母の部屋】
家政婦の三上が彩乃に食事を持っていく。
三上「奥様、本日はシチューです。紗彩さんと一緒に作りました。ぜひ一口でも召し上がって下さい」
彩乃「こんなもの、食べたくないわ!」
彩乃はシチューを乗せたトレーをひっくり返す。
―ガチャン!(皿の割れる音)
三上は彩乃を見つめる。
三上「奥様...」
彩乃「牛肉はどうしたの?...ねえ?!こんな生活するために生きてきた訳じゃない!」
彩乃は子供のようにワーワー泣きわめく。
三上は床に散らばったシチューと破片を片付ける。
紗彩〈母は毎日泣きわめき、情緒不安定なため実家のある北海道に帰った〉
【回想 道端・夕方】
定彦と紗彩はそれぞれリュック1つだけを背負っている。他は全て売却し、残ったものはリュックに収まるくらいの荷物だった。
定彦「紗彩、元気に暮らすんだぞ。じゃあな」
紗彩「お父様待って!」
定彦はそれだけを告げると紗彩の声に一切振り返ることなく去っていく。
紗彩
〈父は2億円の3階建て豪邸を売り、私をネットカフェに置き去りにして稼ぎに行った。
たしかそう、ビルなんて1つもない田舎のコンビニに。
私は...これからどうするんだろう?〉
紗彩は5万円もしたスニーカーの爪先を見つめ、ため息をつく。
【銀行のATM】
紗彩は画面をテキトーにタッチし、通帳記帳の画面までたどり着く。
出てきた通帳には1の後0が5こ書かれている。
紗彩「10万か...」
紗彩はどのくらい必要か分からず、ひとまず3万を引き出す。
紗彩「お金ってこうやって出てくるんだ...」
紗彩は3枚の札を大事に財布にしまう。
【コンビニ】
紗彩は初めてコンビニに行き、おにぎりをレジに持っていく。
店員「108円です」
紗彩「これで...」
紗彩は1万円札を出す。
店員に目を丸くされる。
紗彩はおつりをもらった時にその理由に見当がつく。
紗彩〈銀行で引き落とすのもコンビニでおにぎりを買うのも初めてだった。
さすがに毎日1日中ネットカフェに入り浸るわけにはいかないので、あとは公園でスマホをいじっていた。
バイトをするしかない。
それは分かっていたけれど、どんなバイトが良くて時給1000円が安いのか高いのか分からなかった〉
【歩道・夕方】
紗彩は途方に暮れ、とぼとぼと歩き続ける。
夕日が照らしていて眩しく、目を細める。
ため息が出る。
紗彩「はぁ」
紗彩
〈私このまま死ぬのかな?そんなの...嫌だよ〉
紗彩は唇を噛む。
哀しみを振り払うように走り出すが、誰かとぶつかる。
この時ぶつかった人物が、後に寮生の玲央だと分かる。
玲央「いっ、た!」
紗彩「すみません!」
紗彩は頭を下げて精一杯の謝罪をする。
玲央「どこ見て歩いてんだよ!ちっ」
玲央は捨て台詞を吐き、舌打ちをして去っていく。
全身黒づくめの男の背中を紗彩は見つめる。
紗彩
〈真夏にマスクってあの人どうかしてる〉
紗彩は歩きながら自分の置かれた状況を思い出す。
そして、気づく。
紗彩〈いや、私の方がどうかしてるかも〉
諦めにも似た感情が沸き上がり、紗彩はふっと笑みをこぼす。
紗彩〈私に帰る場所はない。今日もネカフェにお泊まりか〉
紗彩はネカフェに向かう。
最近の出来事をまるで10年前までさかのぼるような遠い目で街道の樹木を見ながら懐古する。
【回想】
紗彩〈私は幼い頃からなに不自由なく暮らしてきた。
朝起きたら大理石に囲まれた洗面所で顔を洗い、家政婦の三上さんの手作りの朝食を食べ、食後のコーヒーを飲む。
登校時間になったら父の秘書の松田さんに学校まで送ってもらう。
学校は有名私大の付属高校で、私は医学部を目指すコースにいた。
とは言ってもコネで入学したから、私の成績は最悪だった〉
【回想 自宅リビング】
紗彩は母に期末テストの成績を見せる。
彩乃「学年ビリなんて...」
紗彩〈母が失望し3日間床に臥せたことは今でも覚えている。
私は校内ではコネ入学の女として有名だった。
だから友達はいなかったし、逆に今回のことで辞められて良かったなんて思ってしまう。
でも母は...〉
【回想 彩乃の部屋】
紗彩が彩乃に退学することになったと伝えると、彩乃はベッドに倒れ込む。
彩乃「あぁ、私の夢が終わった...」
彩乃の涙が枕に染み、じんわりと広がる。
紗彩〈嘆かれてもどうすることも出来ないよ〉
紗彩は唇をぎゅっと噛む。
自分の無能さ、無力さを憐れみ、瞳の奥から涙が生まれるが堪える。
【ネカフェの一室】
紗彩はおかわり無料のカレーを頬張る。
カレーが好きだった父のことを思い出す。
紗彩
〈父は私に「男だったらな」と朝のおはよう代わりに言っていた。
父はメンツを保ち、プライドを傷つけないために私を無理やり私大の附属中学に入れ、エスカレーターで大学まで行けるようにした。
出来が悪いとねちねちと言ってきたし、ビリになったその日は遂にぶたれた〉
【回想 自宅リビング・夜】
紗彩は帰宅した父にもテスト結果を見せる。
定彦「なんなんだ、この成績は?!」
紗彩「すみません...」
紗彩は蚊の鳴くような声で呟く。
定彦「すみませんじゃない!本当に反省してるのか?!」
紗彩は泣き出し、両手で溢れる涙を拭う。
定彦「泣くくらいなら勉強しろ!この...バカ娘っ!」
―バシッ!
父は血眼で紗彩に平手打ちする。
紗彩の頬はジンジンと痛む。
紗彩はその痛みで叩かれたのだと分かる。
父がぶったという事実が衝撃的過ぎて涙が引っ込む。
思考が出来なくなり、そのあとの記憶が消える。
紗彩
〈娘に平手打ちを食らわせるくらいの"恐父"だから、これは良い機会だと思って私を置いて行ってしまったのだろう。
そんな薄情な両親よりも私を気遣ってくれ、私の唯一無二の味方だったのは家政婦の三上さんだった。
仕事一筋の父と自分の習い事に一生懸命な母の代わりに子守りをしてくれたのも三上さんだった。
三上さんと離れてしまったのが1番辛かった。
離れたくなかった。
なんなら着いて行きたかった。〉
紗彩は三上の優しい微笑みを思い浮かべ、涙が溢れる。
膝を抱え、声を圧し殺して泣く。
いつしかそのまま眠りにつく。
【寮付近の道・朝】
紗彩「そろそろ、あれ、食べたいなぁ...」
紗彩は無性にフレンチトーストが食べたくなり、寝ぼけ眼を必死にこじ開け、ネカフェを出る。
電車賃がもったいないので歩いて二駅先のカフェに向かう。
紗彩はすれ違う制服姿の男女を羨ましそうな目で眺める。
紗彩「ふぁ~」
ネカフェではよく眠れてないからあくびが絶えない紗彩。
人目を憚らず大胆にあくびをする。
紗彩
〈こんな生活はもう勘弁だよ。
早く仕事を探さないと...〉
顔を上げた紗彩の目の前に古びた白い建物が現れる。
荘厳な門には貼り紙が貼られている。
『従業員1名募集中!
対象は16歳から65歳の男女。
労働時間は応相談。
お気軽にお問い合わせください!
担当沼口』
紗彩〈よし、決めた!私はここで働く!なんとしてもここで働いてやる!〉
【寮の玄関】
紗彩は直感を信じ、門に手をかける。
「えっ、うそ?開かない!」
ガシャガシャと門を揺らしてみてもびくともしない。
紗彩
〈どこかにインターホンがあるはず。
インターホンどこ?〉
紗彩は必死に探すものの見当たらない。
紗彩〈あんまりうろうろしていると、不審者と間違われかねないし、今日は取り敢えず帰ろう〉
紗彩が踵を返したところで声をかけられる。
沼口「もしかしてウチの面接受けに来た?」
紗彩「あっ、えっ?...はい!」
沼口「あらやだ~。おばちゃん嬉しいわあ。さあさ、中入って。こっちこっち」
紗彩は突然現れた沼口に驚きながらも着いていく。
【寮・食堂】
沼口は紗彩を食堂へと招く。
紗彩は椅子に腰掛け、挨拶をする。
紗彩「突然押しかけてすみません。よろしくお願いいたします」
沼口「じゃあまずは茶でも飲んでゆっくりしな」
紗彩「えっ、いや、でも...」
意外な対応に紗彩は困惑する。
沼口「まあまあそんなに急ぎなさんな。雇うことは決まってるんだし」
紗彩「えっ?そそそそ...そうなんですか?!」
紗彩はびっくりし過ぎて、噛んだ上に声が裏返る。
沼口「だって働き手はあたし1人だし、それに明日から入院だもん」
紗彩〈どういうこと? 入院って何?〉
紗彩は疑問を口にする。
紗彩「あの...入院とは...」
沼口「それはいいから、腹割ってお互い話しましょう。あたしが話すんだからあんたも話してちょうだい」
紗彩「あっ、はい。分かり...ました」
そこから長い話が始まる。
沼口「あたしはここの寮の経営者で寮母の沼口薫。57歳で身長156センチの体重63キロの見事な中年ばばあってなわけよ!毎日イケメンに囲まれて幸せ太りしちゃったわあ!アッハッハ!」
紗彩「あの...イケメンって...」
紗彩の額に汗が出現する。
沼口「そうそう。ここね、男子寮なんだよ~。
7月30日現在9名が生活してて朝晩2食付きで月額7万。ラッキーセブン!」
紗彩〈男子寮か...。しかも同年代の人のお世話ってことだよね?
自分のこともままならないのにそんなこと出来るの?
それ以前に男子寮で私みたいな年頃の女子が働いていいの?
両親に知られたらなんと言われるか...〉
紗彩は手汗を気にする。
紗彩〈エアコンがガンガン効いているというのに手からも汗が出てくるなんて...〉
紗彩はここまできて後悔する。
沼口「皆個性的だけど、いいヤツなんだよねえ。昨日なんか黒ちゃんが...」
紗彩「あのぉ...私も自己紹介をさせていただきたいのですが...」
一向に自分の話が出来ないと思った紗彩は沼口の話を遮る。
沼口「ああ、ごめんごめん。勝手に始めていいよ」
紗彩は立ち上がり、沼口に一礼してから例の過去を話し出す。
紗彩「かくかくしかじか...」
一通り話を聞いて沼口が口を開く。
沼口「それ作り話じゃないよね?」
紗彩「はい。決してそのようなことはしておりません。事実をお話ししているまでです」
紗彩は力強い視線で沼口の瞳を見つめる。
沼口はその目に燃えたぎる決意を感じ、2度頷く。
沼口「そうかい...。わかった。あんたを信じるよ。名前は何て言った?」
紗彩「朱鷺田紗彩です」
沼口「んじゃあ、ときちゃんだね。よろしく、ときちゃん」
紗彩〈ときちゃん...?なんと言うネーミングセンス...〉
独特な沼口の思考に付いていけない紗彩。
だが、大事なことを聞き忘れていたことに気づき、慌てて口を開く。
紗彩
「それで、明日から入院というのは...」
沼口「ああ、そのこと?明日からあたしはポリープ切除手術でねえ、2泊3日病院に行ってくるからその間にいろいろとよろしく頼むよ」
紗彩「いや、でも...私初日からそんな...」
沼口「大丈夫大丈夫。今日中にここ見学してもらうから。ちなみに明日からは住み込みで働きな。角部屋余ってるからそこを使えば良いさ。ささ、行きましょ行きましょ~」
紗彩「えっ?うそ?...えっ?」
紗彩〈住み込み?男子寮で?ここに住むの?えっ?えっ?〉
紗彩「えーーーーっ?!」
思わず絶叫してしまう紗彩。
沼口は心配の素振りを見せながらもニヤニヤする。
沼口「大丈夫かい?もしかして嫌?」
紗彩「いえいえ、大丈夫です」
紗彩〈大丈夫って言ったけど、いいはずないよね?
男子寮に住み込みって、いくら寮母さんと同じ立場とはいえ、それは何かとまずい気がする。
男女共学だったし、カレシもいたことはあるから免疫があるとしてもさすがにこの展開は危険だ。
危険な香りがプンプンするよ〉
紗彩が脳内パニックを起こしている横で、沼口はどんどん話を進めていく。
沼口「えっとねえ、じゃあまずは紗彩ちゃんの新居から。お嬢様には狭いと思うけど許してね」
紗彩
〈もう、ここで生きてくしかないんだ。
中卒を雇ってくれて、しかも部屋付きなんて嬉しすぎることだ。
なんとかやっていこう〉
紗彩は覚悟を決める。
【2階廊下】
沼口が紗彩を部屋へと案内する。
沼口「ここがときちゃんの部屋ね」
紗彩の住まいは2階の角。
沼口がガチャガチャと鍵を回す。
沼口「さあどうぞ。お入り」
紗彩「では失礼します」
ドアノブを回し、ゆっくりと扉を開ける。
紗彩「うわっ!」
紗彩は驚いて思わず悲鳴を上げる。
紗彩の目に飛びこんで来たのは埃まみれの床とぼろぼろのベッド、そして壊れかけの勉強机。
沼口「いやあ、こりゃあひどいね。明日にでも掃除しておくれ」
紗彩「はい、分かりました...」
紗彩〈元自分の部屋より狭い上に埃まみれなんて。
うーん、良くはないよね...。
でもいいってことにして、仕事に集中しなきゃ〉
【3階廊下】
沼口と共に3階に上がる。
3階には沼口の居住スペースと3年生2人の部屋、ランドリールーム、ベランダがある。
沼口「3年生はまだ普通な方かなあ。とは言っても1人は熱血応援団長だし、もう1人はクセのある生徒会長だしねえ。まともなのは寮長くらいか」
紗彩「寮長?」
聞きなれない言葉に首を傾げる紗彩。
沼口は優しく教える。
沼口「一応住人の取りまとめ役で寮長を任命してるんだよ。あたしがいない間はその子に聞けば教えてくれるから。名前はね、白鳥澪。優しいからすぐ仲良くなれると思うよ」
紗彩「はい、分かりました。何かあったら白鳥さんに相談します」
沼口「あたしからも言っとくから心配しないで」
紗彩は寮長が優しいと聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
【2階廊下】
再び2階に戻り、改めて紗彩は説明を受ける。
沼口「ときちゃんの隣とお向かいと斜めはみんな1年。
向こうが2年生とあっちの端が3年の生徒会長。後で皆の名前が書いてある寮の見取り図渡すからよく見とくといいよ」
紗彩「ありがとうございます」
私の昔の家より小さいくらいだし、配置はすぐに覚えられそうだと紗彩は安心する。
しかし、ある不安に顔を曇らせる。
紗彩
〈問題は家事かぁ。
三上さんに最低限のことは習っていたけどおそらく一般の方よりは出来ない。
不安しかないよ...〉
【1階】
沼口
「で、最後に1階ね。ここは大事よ~。まずさっきのダイニングキッチンでしょ、そして向こう側に大浴場、その隣が洗面所で、トイレ。水回りは毎日清掃しなきゃならないから、も~大変よ!」
紗彩「毎日...ですか...」
紗彩は明らかに嫌な顔をする。
沼口は見抜いてイヤミを交えて言う。
沼口「ときちゃんは元お嬢様だから掃除したことないと思うけどね、けっこう大変なのよー」
紗彩〈16になるまで自分の部屋を掃除したことがないなんて恥ずかしすぎて誰にも言えないな...〉
紗彩は密かにため息をつく。
沼口「よし。じゃあ一通り説明終わったから、後は明日ね。明日は午前6時にここに来て。朝食作りから一緒にやりましょう。じゃ、明日からよろしく」
紗彩「よろしくお願いします」
紗彩はフレンチトーストを食べに行くために出てきたことをすっかり忘れ、ネカフェに直帰。
明日からの生活に大きな不安と少しの期待を抱く紗彩。
ネカフェの天井を見つめながら呟く。
「私...生きていけるかな?」
※1話終了
【回想、自宅のリビング・夜】
紗彩の斜め右に座る父定彦が項垂れている。
紗彩の母彩乃は顔を両手で覆い、声を圧し殺して泣く。
紗彩は状況が飲み込めない。
紗彩 「お父様、今なんとおっしゃいました?」
定彦「すまない...。本当にすまない」
定彦は事の顛末を語りだす。
【回想 父定彦の病院、医院長室】
コンコンとノックの音が鳴る。
定彦は看護師を中に招き入れる。
定彦「話とはなんだね?」
看護師は手を小刻みに震わせている。
看護師「実は...」
紗彩
〈外科部長だった人が医療ミスを隠蔽し、部下にウソの記録をさせた。
それが発覚したのは1年前のこと。
手術のサポートをしていた看護師が父に密告したんだ。〉
【回想 自宅ダイニング】
彩乃「あなた、大丈夫なの?」
定彦「まぁ、なんとか」
彩乃「でも、あのことはもう大分広まっているんじゃ...」
〈両親の会話を私が耳にした時にはもう手遅れだったのかもしれない。
事件が公になる前から徐々に収益は減少していたものの、曾祖父の代から続く歴史ある病院であるため簡単に潰すことは出来ず、父は大規模リストラをして繋ぎ止めていた〉
【回想 自宅リビング・夜】
紗彩が学校帰りにテレビを付けると、病院の外観が映し出される。
紗彩は身を乗り出す。
アナウンサー
「では次のニュースです。朱鷺田総合病院の医療ミス隠蔽事件の続報です」
紗彩は口をあんぐりと開けながらニュースを見る。
紗彩
〈事件がニュースでも取り上げられてしまったために危険な病院というレッテルを貼られ、私達は世間から白い目で見られるようになった〉
【回想 紗彩自室・夜】
紗彩はスマホで病院の口コミを目にする。
"朱鷺田病院はヤブ医者揃い"
"人殺し病院"
"人殺しておいて隠蔽とかあり得ないでしょ?"
"ミスを隠すとか、ミスを謝れないとか、人間として終わってるw"
紗彩〈裏サイトやSNSでもその事実が囁かれ、患者が来なくなった上に、入院している人からも転院したいと言われるようになった。
そして今から1ヶ月前...〉
【回想 自宅リビング、最初の場面と同じ】
「すまない...。本当にすまない...」
紗彩
〈遂に廃業。それから生粋のお嬢様だった私の生活は一変した〉
【回想 母の部屋】
家政婦の三上が彩乃に食事を持っていく。
三上「奥様、本日はシチューです。紗彩さんと一緒に作りました。ぜひ一口でも召し上がって下さい」
彩乃「こんなもの、食べたくないわ!」
彩乃はシチューを乗せたトレーをひっくり返す。
―ガチャン!(皿の割れる音)
三上は彩乃を見つめる。
三上「奥様...」
彩乃「牛肉はどうしたの?...ねえ?!こんな生活するために生きてきた訳じゃない!」
彩乃は子供のようにワーワー泣きわめく。
三上は床に散らばったシチューと破片を片付ける。
紗彩〈母は毎日泣きわめき、情緒不安定なため実家のある北海道に帰った〉
【回想 道端・夕方】
定彦と紗彩はそれぞれリュック1つだけを背負っている。他は全て売却し、残ったものはリュックに収まるくらいの荷物だった。
定彦「紗彩、元気に暮らすんだぞ。じゃあな」
紗彩「お父様待って!」
定彦はそれだけを告げると紗彩の声に一切振り返ることなく去っていく。
紗彩
〈父は2億円の3階建て豪邸を売り、私をネットカフェに置き去りにして稼ぎに行った。
たしかそう、ビルなんて1つもない田舎のコンビニに。
私は...これからどうするんだろう?〉
紗彩は5万円もしたスニーカーの爪先を見つめ、ため息をつく。
【銀行のATM】
紗彩は画面をテキトーにタッチし、通帳記帳の画面までたどり着く。
出てきた通帳には1の後0が5こ書かれている。
紗彩「10万か...」
紗彩はどのくらい必要か分からず、ひとまず3万を引き出す。
紗彩「お金ってこうやって出てくるんだ...」
紗彩は3枚の札を大事に財布にしまう。
【コンビニ】
紗彩は初めてコンビニに行き、おにぎりをレジに持っていく。
店員「108円です」
紗彩「これで...」
紗彩は1万円札を出す。
店員に目を丸くされる。
紗彩はおつりをもらった時にその理由に見当がつく。
紗彩〈銀行で引き落とすのもコンビニでおにぎりを買うのも初めてだった。
さすがに毎日1日中ネットカフェに入り浸るわけにはいかないので、あとは公園でスマホをいじっていた。
バイトをするしかない。
それは分かっていたけれど、どんなバイトが良くて時給1000円が安いのか高いのか分からなかった〉
【歩道・夕方】
紗彩は途方に暮れ、とぼとぼと歩き続ける。
夕日が照らしていて眩しく、目を細める。
ため息が出る。
紗彩「はぁ」
紗彩
〈私このまま死ぬのかな?そんなの...嫌だよ〉
紗彩は唇を噛む。
哀しみを振り払うように走り出すが、誰かとぶつかる。
この時ぶつかった人物が、後に寮生の玲央だと分かる。
玲央「いっ、た!」
紗彩「すみません!」
紗彩は頭を下げて精一杯の謝罪をする。
玲央「どこ見て歩いてんだよ!ちっ」
玲央は捨て台詞を吐き、舌打ちをして去っていく。
全身黒づくめの男の背中を紗彩は見つめる。
紗彩
〈真夏にマスクってあの人どうかしてる〉
紗彩は歩きながら自分の置かれた状況を思い出す。
そして、気づく。
紗彩〈いや、私の方がどうかしてるかも〉
諦めにも似た感情が沸き上がり、紗彩はふっと笑みをこぼす。
紗彩〈私に帰る場所はない。今日もネカフェにお泊まりか〉
紗彩はネカフェに向かう。
最近の出来事をまるで10年前までさかのぼるような遠い目で街道の樹木を見ながら懐古する。
【回想】
紗彩〈私は幼い頃からなに不自由なく暮らしてきた。
朝起きたら大理石に囲まれた洗面所で顔を洗い、家政婦の三上さんの手作りの朝食を食べ、食後のコーヒーを飲む。
登校時間になったら父の秘書の松田さんに学校まで送ってもらう。
学校は有名私大の付属高校で、私は医学部を目指すコースにいた。
とは言ってもコネで入学したから、私の成績は最悪だった〉
【回想 自宅リビング】
紗彩は母に期末テストの成績を見せる。
彩乃「学年ビリなんて...」
紗彩〈母が失望し3日間床に臥せたことは今でも覚えている。
私は校内ではコネ入学の女として有名だった。
だから友達はいなかったし、逆に今回のことで辞められて良かったなんて思ってしまう。
でも母は...〉
【回想 彩乃の部屋】
紗彩が彩乃に退学することになったと伝えると、彩乃はベッドに倒れ込む。
彩乃「あぁ、私の夢が終わった...」
彩乃の涙が枕に染み、じんわりと広がる。
紗彩〈嘆かれてもどうすることも出来ないよ〉
紗彩は唇をぎゅっと噛む。
自分の無能さ、無力さを憐れみ、瞳の奥から涙が生まれるが堪える。
【ネカフェの一室】
紗彩はおかわり無料のカレーを頬張る。
カレーが好きだった父のことを思い出す。
紗彩
〈父は私に「男だったらな」と朝のおはよう代わりに言っていた。
父はメンツを保ち、プライドを傷つけないために私を無理やり私大の附属中学に入れ、エスカレーターで大学まで行けるようにした。
出来が悪いとねちねちと言ってきたし、ビリになったその日は遂にぶたれた〉
【回想 自宅リビング・夜】
紗彩は帰宅した父にもテスト結果を見せる。
定彦「なんなんだ、この成績は?!」
紗彩「すみません...」
紗彩は蚊の鳴くような声で呟く。
定彦「すみませんじゃない!本当に反省してるのか?!」
紗彩は泣き出し、両手で溢れる涙を拭う。
定彦「泣くくらいなら勉強しろ!この...バカ娘っ!」
―バシッ!
父は血眼で紗彩に平手打ちする。
紗彩の頬はジンジンと痛む。
紗彩はその痛みで叩かれたのだと分かる。
父がぶったという事実が衝撃的過ぎて涙が引っ込む。
思考が出来なくなり、そのあとの記憶が消える。
紗彩
〈娘に平手打ちを食らわせるくらいの"恐父"だから、これは良い機会だと思って私を置いて行ってしまったのだろう。
そんな薄情な両親よりも私を気遣ってくれ、私の唯一無二の味方だったのは家政婦の三上さんだった。
仕事一筋の父と自分の習い事に一生懸命な母の代わりに子守りをしてくれたのも三上さんだった。
三上さんと離れてしまったのが1番辛かった。
離れたくなかった。
なんなら着いて行きたかった。〉
紗彩は三上の優しい微笑みを思い浮かべ、涙が溢れる。
膝を抱え、声を圧し殺して泣く。
いつしかそのまま眠りにつく。
【寮付近の道・朝】
紗彩「そろそろ、あれ、食べたいなぁ...」
紗彩は無性にフレンチトーストが食べたくなり、寝ぼけ眼を必死にこじ開け、ネカフェを出る。
電車賃がもったいないので歩いて二駅先のカフェに向かう。
紗彩はすれ違う制服姿の男女を羨ましそうな目で眺める。
紗彩「ふぁ~」
ネカフェではよく眠れてないからあくびが絶えない紗彩。
人目を憚らず大胆にあくびをする。
紗彩
〈こんな生活はもう勘弁だよ。
早く仕事を探さないと...〉
顔を上げた紗彩の目の前に古びた白い建物が現れる。
荘厳な門には貼り紙が貼られている。
『従業員1名募集中!
対象は16歳から65歳の男女。
労働時間は応相談。
お気軽にお問い合わせください!
担当沼口』
紗彩〈よし、決めた!私はここで働く!なんとしてもここで働いてやる!〉
【寮の玄関】
紗彩は直感を信じ、門に手をかける。
「えっ、うそ?開かない!」
ガシャガシャと門を揺らしてみてもびくともしない。
紗彩
〈どこかにインターホンがあるはず。
インターホンどこ?〉
紗彩は必死に探すものの見当たらない。
紗彩〈あんまりうろうろしていると、不審者と間違われかねないし、今日は取り敢えず帰ろう〉
紗彩が踵を返したところで声をかけられる。
沼口「もしかしてウチの面接受けに来た?」
紗彩「あっ、えっ?...はい!」
沼口「あらやだ~。おばちゃん嬉しいわあ。さあさ、中入って。こっちこっち」
紗彩は突然現れた沼口に驚きながらも着いていく。
【寮・食堂】
沼口は紗彩を食堂へと招く。
紗彩は椅子に腰掛け、挨拶をする。
紗彩「突然押しかけてすみません。よろしくお願いいたします」
沼口「じゃあまずは茶でも飲んでゆっくりしな」
紗彩「えっ、いや、でも...」
意外な対応に紗彩は困惑する。
沼口「まあまあそんなに急ぎなさんな。雇うことは決まってるんだし」
紗彩「えっ?そそそそ...そうなんですか?!」
紗彩はびっくりし過ぎて、噛んだ上に声が裏返る。
沼口「だって働き手はあたし1人だし、それに明日から入院だもん」
紗彩〈どういうこと? 入院って何?〉
紗彩は疑問を口にする。
紗彩「あの...入院とは...」
沼口「それはいいから、腹割ってお互い話しましょう。あたしが話すんだからあんたも話してちょうだい」
紗彩「あっ、はい。分かり...ました」
そこから長い話が始まる。
沼口「あたしはここの寮の経営者で寮母の沼口薫。57歳で身長156センチの体重63キロの見事な中年ばばあってなわけよ!毎日イケメンに囲まれて幸せ太りしちゃったわあ!アッハッハ!」
紗彩「あの...イケメンって...」
紗彩の額に汗が出現する。
沼口「そうそう。ここね、男子寮なんだよ~。
7月30日現在9名が生活してて朝晩2食付きで月額7万。ラッキーセブン!」
紗彩〈男子寮か...。しかも同年代の人のお世話ってことだよね?
自分のこともままならないのにそんなこと出来るの?
それ以前に男子寮で私みたいな年頃の女子が働いていいの?
両親に知られたらなんと言われるか...〉
紗彩は手汗を気にする。
紗彩〈エアコンがガンガン効いているというのに手からも汗が出てくるなんて...〉
紗彩はここまできて後悔する。
沼口「皆個性的だけど、いいヤツなんだよねえ。昨日なんか黒ちゃんが...」
紗彩「あのぉ...私も自己紹介をさせていただきたいのですが...」
一向に自分の話が出来ないと思った紗彩は沼口の話を遮る。
沼口「ああ、ごめんごめん。勝手に始めていいよ」
紗彩は立ち上がり、沼口に一礼してから例の過去を話し出す。
紗彩「かくかくしかじか...」
一通り話を聞いて沼口が口を開く。
沼口「それ作り話じゃないよね?」
紗彩「はい。決してそのようなことはしておりません。事実をお話ししているまでです」
紗彩は力強い視線で沼口の瞳を見つめる。
沼口はその目に燃えたぎる決意を感じ、2度頷く。
沼口「そうかい...。わかった。あんたを信じるよ。名前は何て言った?」
紗彩「朱鷺田紗彩です」
沼口「んじゃあ、ときちゃんだね。よろしく、ときちゃん」
紗彩〈ときちゃん...?なんと言うネーミングセンス...〉
独特な沼口の思考に付いていけない紗彩。
だが、大事なことを聞き忘れていたことに気づき、慌てて口を開く。
紗彩
「それで、明日から入院というのは...」
沼口「ああ、そのこと?明日からあたしはポリープ切除手術でねえ、2泊3日病院に行ってくるからその間にいろいろとよろしく頼むよ」
紗彩「いや、でも...私初日からそんな...」
沼口「大丈夫大丈夫。今日中にここ見学してもらうから。ちなみに明日からは住み込みで働きな。角部屋余ってるからそこを使えば良いさ。ささ、行きましょ行きましょ~」
紗彩「えっ?うそ?...えっ?」
紗彩〈住み込み?男子寮で?ここに住むの?えっ?えっ?〉
紗彩「えーーーーっ?!」
思わず絶叫してしまう紗彩。
沼口は心配の素振りを見せながらもニヤニヤする。
沼口「大丈夫かい?もしかして嫌?」
紗彩「いえいえ、大丈夫です」
紗彩〈大丈夫って言ったけど、いいはずないよね?
男子寮に住み込みって、いくら寮母さんと同じ立場とはいえ、それは何かとまずい気がする。
男女共学だったし、カレシもいたことはあるから免疫があるとしてもさすがにこの展開は危険だ。
危険な香りがプンプンするよ〉
紗彩が脳内パニックを起こしている横で、沼口はどんどん話を進めていく。
沼口「えっとねえ、じゃあまずは紗彩ちゃんの新居から。お嬢様には狭いと思うけど許してね」
紗彩
〈もう、ここで生きてくしかないんだ。
中卒を雇ってくれて、しかも部屋付きなんて嬉しすぎることだ。
なんとかやっていこう〉
紗彩は覚悟を決める。
【2階廊下】
沼口が紗彩を部屋へと案内する。
沼口「ここがときちゃんの部屋ね」
紗彩の住まいは2階の角。
沼口がガチャガチャと鍵を回す。
沼口「さあどうぞ。お入り」
紗彩「では失礼します」
ドアノブを回し、ゆっくりと扉を開ける。
紗彩「うわっ!」
紗彩は驚いて思わず悲鳴を上げる。
紗彩の目に飛びこんで来たのは埃まみれの床とぼろぼろのベッド、そして壊れかけの勉強机。
沼口「いやあ、こりゃあひどいね。明日にでも掃除しておくれ」
紗彩「はい、分かりました...」
紗彩〈元自分の部屋より狭い上に埃まみれなんて。
うーん、良くはないよね...。
でもいいってことにして、仕事に集中しなきゃ〉
【3階廊下】
沼口と共に3階に上がる。
3階には沼口の居住スペースと3年生2人の部屋、ランドリールーム、ベランダがある。
沼口「3年生はまだ普通な方かなあ。とは言っても1人は熱血応援団長だし、もう1人はクセのある生徒会長だしねえ。まともなのは寮長くらいか」
紗彩「寮長?」
聞きなれない言葉に首を傾げる紗彩。
沼口は優しく教える。
沼口「一応住人の取りまとめ役で寮長を任命してるんだよ。あたしがいない間はその子に聞けば教えてくれるから。名前はね、白鳥澪。優しいからすぐ仲良くなれると思うよ」
紗彩「はい、分かりました。何かあったら白鳥さんに相談します」
沼口「あたしからも言っとくから心配しないで」
紗彩は寮長が優しいと聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
【2階廊下】
再び2階に戻り、改めて紗彩は説明を受ける。
沼口「ときちゃんの隣とお向かいと斜めはみんな1年。
向こうが2年生とあっちの端が3年の生徒会長。後で皆の名前が書いてある寮の見取り図渡すからよく見とくといいよ」
紗彩「ありがとうございます」
私の昔の家より小さいくらいだし、配置はすぐに覚えられそうだと紗彩は安心する。
しかし、ある不安に顔を曇らせる。
紗彩
〈問題は家事かぁ。
三上さんに最低限のことは習っていたけどおそらく一般の方よりは出来ない。
不安しかないよ...〉
【1階】
沼口
「で、最後に1階ね。ここは大事よ~。まずさっきのダイニングキッチンでしょ、そして向こう側に大浴場、その隣が洗面所で、トイレ。水回りは毎日清掃しなきゃならないから、も~大変よ!」
紗彩「毎日...ですか...」
紗彩は明らかに嫌な顔をする。
沼口は見抜いてイヤミを交えて言う。
沼口「ときちゃんは元お嬢様だから掃除したことないと思うけどね、けっこう大変なのよー」
紗彩〈16になるまで自分の部屋を掃除したことがないなんて恥ずかしすぎて誰にも言えないな...〉
紗彩は密かにため息をつく。
沼口「よし。じゃあ一通り説明終わったから、後は明日ね。明日は午前6時にここに来て。朝食作りから一緒にやりましょう。じゃ、明日からよろしく」
紗彩「よろしくお願いします」
紗彩はフレンチトーストを食べに行くために出てきたことをすっかり忘れ、ネカフェに直帰。
明日からの生活に大きな不安と少しの期待を抱く紗彩。
ネカフェの天井を見つめながら呟く。
「私...生きていけるかな?」
※1話終了