狐面は夜に咲く
とある屋敷の庭にて
煌々と闇夜に咲く狐面。



ひとつ、ふたつ、みっつーー数えるのを少女は早々にやめた。



多すぎるのだ、数えるには。



この屋敷には広い庭がある。しかし花はない、花はないが――そこには虚ろな瞳をした狐面がえんえんと咲いている。



何故かは知らない。ここの屋敷がいつからあって、どうしてこのような事態になっているのか。ただ――懐かしい気がした、この屋敷に呼ばれているような。そんな不可思議な理由で今に至るというわけだ。



「狐面しかないわね」



どこまでいっても狐面。



どこまでいっても狐面。



こんな光景は二度と拝めないのではないかと思うと、スマホを置いてきてしまったのは惜しい。痛恨のミスだ。



少女は顎に手を当て考える。



「この狐面……どういう原理なのかしら」



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