復讐日記
無断駐車
私が住むマンションには、敷地内に戸数分以上の駐車スペースがある。夫婦で1台ずつ車を持っていたり、来客用にキープしたりと、1戸が複数の駐車場を契約することが可能だ。駐車場に入るにはゲートも何も無いため、使用者は指定されたスペースに先に車を止めに行き、オートロックの正面玄関へ回ることになる。先日空き巣事件があったため、裏口にもオートロック付きの更に高いフェンスが出来た。
何の問題も無さそうな平和な駐車場のはずが、ここ数日車の持ち主たちがざわついていた。契約者が居ないスペースに見慣れない車が置かれていると。それだけならまだしも、その車が去った後食べ物や飲み物のゴミが散乱していたりタイヤの泥跡が付いていたり。
マンションの住人が小さな集会室に集められ、この無断駐車について管理会社の男性から説明を受けた。監視カメラがあるので、管理会社が映像を確認している、と。夜中に入って来て早朝に去ったり昼間だったりで、若い夫婦と思われる男女だそう。服装がだらしない、と管理会社の男性は言っていた。具体的にどんな服装かは言わなかった。
はいはい、ではでは、ちょっくら頭ん中覗かして戴きますか。
意識を集中して管理会社の若い男性の意識の中へ。若いだけあって邪念が渦巻いている。あー、ふわーっと出たり消えたりしている女性は彼女かしらねー。
掻き分けて入り込むと…もう、この男性はほんとに色んなことを考えてるなぁ。思考が入り組んで霧も濃い。漸く監視カメラの映像が見えて来た。侵入口、駐車場の全体、入り口からの映像、奥からの映像。真ん中辺りにあるカメラは全方位が映る。
私は車を持たないので、駐車場には入居当初から今まで入ったことが無い。へーこんな造りなんだ、と思いながら映像を観ていた。
白いワンボックスカーがスーッと駐車したところで一旦映像がストップした。静止画像を本社に転送している。警察に無断駐車を取り締まってもらうためにその画像を提出するのだろう。再生開始。髪の毛ボサボサの若い男女が降りて来た。寝間着? 部屋着なんてご丁寧な物を着ているわけではない。だらしないという表現がぴったりの服装。それ以外に表現する言葉がみつからない。車から離れた。不在の時間を早送り。2時間後に男女は戻って来た。スーパーの袋をぶら下げている。あー、駅前のスーパーで買い物をしたのね。スーパーの駐車場だと時間制限があるし、有料だから、こっそり入れるこのマンションの駐車場をみつけてシメシメと止めてるわけだ。
男女は乗り込んだが車は動き出さない。車の中で何やらしている。ズーム。あ、食べてるのか。昼ご飯?にしては早いかな。うわっ、窓の外に何か放り投げた。ゴミが散乱しているのはこういうわけだったか。モラルもマナーもなってない人種だわね。
別の日の映像。夜かな。駐車してすぐ車の中で寝始めた。え? 家は? こいつらの意識の中に…あー、入れないかー。流石の私も映像を通してというのは無理なのね、了解。
遡ること4ヶ月ほぼ毎日ずっとこんな風に夜は寝に来て、昼はご飯食べて散らかしてを繰り返していた。車は持っているのに家が無いのかな。車庫証明はどうなってるんだろう。あ、車のナンバーは? おっと、関東ではないぞ。こいつらホームレスだな。車を根城にしてるわけだ。仕事はしてるんだろうな。お金があるんだから。
疲れた。意識を集中し過ぎると頭が痛くなるので、この辺で解放。
警察に通報して、と管理会社の男性は言い、住人達は頷いている。私も頷いて見せたけど、私自身でお仕置きしようと考えている。まずは待ち伏せだな。
翌朝仕事に行く前に駐車場へ行ってみた。あ、居た。食べてる。車中で朝食を、ですか。目が合った。私は立ち止まって意識を集中。奴らの意識の中に入る。ユニフォームを着て清掃している姿が見えた。仕事は清掃員なのね。同じ職場なんだ。どこだろう? 工場? よくわからない。突然意識が途切れた。車が動き出した。振り払われたか。でももう遅い、お気の毒様。あなた方はこの世の中には不要です。
こいつらにはどんな死に方が相応しいんだろう。
車の中の酸素を全部抜くか。寝ている間に。酸欠って苦しいのかしら。知らんけど(笑) 今夜決行。私と目が合ったからバレるのを恐れて来ないかも?
というデリケートな神経はこいつらには無かった。また来た。無防備に私の意識の中に入って来た。思考回路が単純な人間の意識はトレースしやすいから楽だ。
最後の晩餐は何? おー、寿司。豪華で良かったね。煙草吸ったり酒呑んだりしてそれらのゴミを全て窓から外へ放り投げ、おやすみなさいですか。そう言えば服装、ずっと同じだ。着替えてないの? 風呂は? スーパー銭湯にでも行ってるのかしらね。
翌朝、窒息死した2人の遺体が発見された。現場検証をしたって車中の空気が全く無かったなんてわかりっこないしね。
一丁上がり。
何の問題も無さそうな平和な駐車場のはずが、ここ数日車の持ち主たちがざわついていた。契約者が居ないスペースに見慣れない車が置かれていると。それだけならまだしも、その車が去った後食べ物や飲み物のゴミが散乱していたりタイヤの泥跡が付いていたり。
マンションの住人が小さな集会室に集められ、この無断駐車について管理会社の男性から説明を受けた。監視カメラがあるので、管理会社が映像を確認している、と。夜中に入って来て早朝に去ったり昼間だったりで、若い夫婦と思われる男女だそう。服装がだらしない、と管理会社の男性は言っていた。具体的にどんな服装かは言わなかった。
はいはい、ではでは、ちょっくら頭ん中覗かして戴きますか。
意識を集中して管理会社の若い男性の意識の中へ。若いだけあって邪念が渦巻いている。あー、ふわーっと出たり消えたりしている女性は彼女かしらねー。
掻き分けて入り込むと…もう、この男性はほんとに色んなことを考えてるなぁ。思考が入り組んで霧も濃い。漸く監視カメラの映像が見えて来た。侵入口、駐車場の全体、入り口からの映像、奥からの映像。真ん中辺りにあるカメラは全方位が映る。
私は車を持たないので、駐車場には入居当初から今まで入ったことが無い。へーこんな造りなんだ、と思いながら映像を観ていた。
白いワンボックスカーがスーッと駐車したところで一旦映像がストップした。静止画像を本社に転送している。警察に無断駐車を取り締まってもらうためにその画像を提出するのだろう。再生開始。髪の毛ボサボサの若い男女が降りて来た。寝間着? 部屋着なんてご丁寧な物を着ているわけではない。だらしないという表現がぴったりの服装。それ以外に表現する言葉がみつからない。車から離れた。不在の時間を早送り。2時間後に男女は戻って来た。スーパーの袋をぶら下げている。あー、駅前のスーパーで買い物をしたのね。スーパーの駐車場だと時間制限があるし、有料だから、こっそり入れるこのマンションの駐車場をみつけてシメシメと止めてるわけだ。
男女は乗り込んだが車は動き出さない。車の中で何やらしている。ズーム。あ、食べてるのか。昼ご飯?にしては早いかな。うわっ、窓の外に何か放り投げた。ゴミが散乱しているのはこういうわけだったか。モラルもマナーもなってない人種だわね。
別の日の映像。夜かな。駐車してすぐ車の中で寝始めた。え? 家は? こいつらの意識の中に…あー、入れないかー。流石の私も映像を通してというのは無理なのね、了解。
遡ること4ヶ月ほぼ毎日ずっとこんな風に夜は寝に来て、昼はご飯食べて散らかしてを繰り返していた。車は持っているのに家が無いのかな。車庫証明はどうなってるんだろう。あ、車のナンバーは? おっと、関東ではないぞ。こいつらホームレスだな。車を根城にしてるわけだ。仕事はしてるんだろうな。お金があるんだから。
疲れた。意識を集中し過ぎると頭が痛くなるので、この辺で解放。
警察に通報して、と管理会社の男性は言い、住人達は頷いている。私も頷いて見せたけど、私自身でお仕置きしようと考えている。まずは待ち伏せだな。
翌朝仕事に行く前に駐車場へ行ってみた。あ、居た。食べてる。車中で朝食を、ですか。目が合った。私は立ち止まって意識を集中。奴らの意識の中に入る。ユニフォームを着て清掃している姿が見えた。仕事は清掃員なのね。同じ職場なんだ。どこだろう? 工場? よくわからない。突然意識が途切れた。車が動き出した。振り払われたか。でももう遅い、お気の毒様。あなた方はこの世の中には不要です。
こいつらにはどんな死に方が相応しいんだろう。
車の中の酸素を全部抜くか。寝ている間に。酸欠って苦しいのかしら。知らんけど(笑) 今夜決行。私と目が合ったからバレるのを恐れて来ないかも?
というデリケートな神経はこいつらには無かった。また来た。無防備に私の意識の中に入って来た。思考回路が単純な人間の意識はトレースしやすいから楽だ。
最後の晩餐は何? おー、寿司。豪華で良かったね。煙草吸ったり酒呑んだりしてそれらのゴミを全て窓から外へ放り投げ、おやすみなさいですか。そう言えば服装、ずっと同じだ。着替えてないの? 風呂は? スーパー銭湯にでも行ってるのかしらね。
翌朝、窒息死した2人の遺体が発見された。現場検証をしたって車中の空気が全く無かったなんてわかりっこないしね。
一丁上がり。