奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
ふたりの関係は、誰の目にも止まることはなかった。
会う時は細心の注意を払っていたし、ふたりが交際していることをひた隠しにしていたからだ。
それに年齢差があるのが一番のネックだった。社会人と高校生では、交際をオープンにできない。
しかも奏の母は梨音のスポンサーとして関わっている。
奏の気持ちは梨音との将来を考えるまでに固まっていたが、まだ両親に打ち明けるにはタイミングが悪い。
これからの梨音の音楽家としての成功に水を差してはいけないという配慮もあった。
おまけに間野家は、複雑な家庭環境に変わっている。
梨音には内緒にしていたが、義理の弟が出来たことで間野家の雰囲気が以前より悪くなっていたのだ。
父のワンマンぶりは相変わらずだし、母は考え過ぎるのか落ち込んでばかりいて暗い表情だ。
義弟となった京太は大阪の大学へ進学し、我関せずとばかり好き放題している。
奏は仕事と家庭の問題で心が休まらない毎日だから、梨音とふたりだけの時間だけを救いにしていた。
ささやかな安らぎの時間を誰にも邪魔されたくなかった。