奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
 


***


奏が言った通り、同じマンションに住んでいるとはいえ梨音が京太に会うことはほとんどなかった。

マンションに引っ越してきた京太はさっそく奏の部屋に挨拶に来て、話し込むでもなくリビングで簡単にお茶を飲んだだけですぐに帰っていった。
京太はなんともいえない表情で梨音を見ていた。
梨音がどんな人物なのか奏に尋ねることはなかったが、冷たい視線が印象に残っていた。
京太からみれば、義兄の遊び相手か都合のいい同棲相手くらいに考えているのだろう。

そう思われても、梨音は気にしていない。
言葉では言い表せないくらい、奏が大切にしてくれているのを知っているからだ。

奏からは、もう京太からはここに来ないだろうし、こちらから訪ねて行く必要もないと言われている。
義理の兄弟はあっさりとした関係らしく、ひとりっ子の梨音にはよくわからなかった。

たまにマンションのエントランスやエレベーターで京太と出会う日もあったが、話すこともないので挨拶を交わすくらいの関係が続いていた。



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