奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


急いでエントランスホールに降り、近くのコンビニへ行こうとした梨音をコンシェルジュの高橋が呼び止めた。

「春名様、どうかなさいましたか?」
「あ、高橋さん」

「なにかお手伝いいたしましょうか?」
「奏さんの弟さんが体調が悪いので、チョッとコンビニまで行ってきます」
「お医者様をおよびしましょうか?」

高橋も心配そうに声をかけてくれる。

「そこまで酷くはなさそうです」
「わかりました。私は夜勤の者と交代いたしますが伝えておきますので、ご用がありましたらお申し付けください」

「ありがとう、高橋さん」
「お買い物、気をつけていってらっしゃいませ」

人に物を頼むことに慣れていない梨音は、高橋の申し出を断ってしまった。
だが、その事が後から梨音を救う事になる。


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