奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


梨音がスポーツドリンクや熱を下げるシートを買って帰ると京太はリビングではなく、奏のベッドで休んでいた。

(どうしよう。夜には奏さん帰って来るのに)

いくら二人の仲が良くないとはいえ、病気の義弟を追い出すことはしないだろう。

(仕方ない、ベッドにいてもらおう)

具合が悪い人に無理を言えないと思った梨音は、京太を動かすことを諦めた。

「京太さん、水分取らなくちゃ、起きてお水飲みましょう。」
「ああ、すみません」

ゆっくりと京太が起き上がった。

「お熱はどうでした?」
「38度くらいです」

苦しそうに京太が答える。

「インフルエンザじゃないといいんですが」

冷たいスポーツドリンクのキャップを開けて梨音が渡そうとしたが京太の手が滑って、ボトルがベッドの上に転がった。

「あ、大変!」
「ああ、濡れちゃった。気持ち悪いなあ」

スポーツドリンクで京太のシャツやシーツはかなり濡れている。

「濡れたもの変えますから、京太さんちょっと動いてください」

「身体までベトベトだ。シャワー借りますね」

京太はベッドから下りて、スタスタとバスルームに向かって歩き出した。

「あ、あの!」

梨音が止める声も聞こえていないようだ。



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