奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
(なんてマイペースな人なんだろう)
奏の義弟だが、実際は従兄弟だと聞いている。
(奏さんと似ているようで、全然違うタイプだわ)
相手の迷惑なんて、考えもしない人なのだろう。
ベッドを独占したうえ勝手にシャワーを浴びるなんて非常識ではないだろうかと思いながらも、奏の義弟だから粗末に扱っては失礼だろう。
(困ったな……)
梨音は濡れたシーツやカバーを外して洗濯機に放り込む。
2月とは言え、買い物へ走ったりシーツ交換したりしていたら梨音は汗びっしょりだ。
やっと片付いた頃、濡れた髪をタオルで拭きながら京太がリビングルームに入って来た。
奏のTシャツを着ている。
「兄貴の借りました」
「は、はい」
「飲み物もらえますか?」
京太の態度は最初に訪ねてきた時とは比べものにならないくらい横柄だ。
梨音がキッチンでスポーツドリンクの用意をしていたら、玄関のドアが開く音が聞こえた。
(奏さんだ!)
助かったと梨音は息をついた。奏に京太をなんとかしてもらおうと出迎えに走った。