奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
「お前、なにを言ってるんだ」
凍えるほど冷たい声が自分の口から出たものだとわかると、奏はギュッと手を握りしめた。
「おお、コワイ。出張で今日は遅いんじゃなかったの?」
まだ京太はニヤニヤとしている。
「ちゃんと説明しろ!」
「だからあ、義兄さんのいない間に僕らはお楽しみだったてことさ。」
「そんな、嘘を言わないで!」
梨音が叫んでいたが、奏は京太の方しか見ていない。
「ほら、見てみろよ」
京太がスタスタ歩いて寝室のドアを大きく開けると、真新しいカバーに変えたばかりのベッドが見えた。
「ヤバいから、梨音がカバーを洗濯中なのさ」
「酷いわ!」
梨音が京太に詰め寄るのが見えたが、奏の視線はベッドに向いたままだ。
「梨音、バレちゃったんだからしょうがないよ」
「どうして、そんな嘘ばっかり言うの⁉」
「諦めなよ、義兄さんだけじゃガマンできなかったって言えよ」
奏は寝室を見たまま動けずに立ちつくしていた。
(俺はなにを見せられているんだ……)
梨音は半泣きで京太に『嘘つき』と言っているのが聞こえたが、奏は言葉を失っていた。
「あ~あ、ゲイジュツカって我儘だね。あんなに喜んで抱かれてたのにさ」
「奏さん、京太さんの言ってること全部嘘だから!」
梨音が大きく叫んで、奏の腕にすがりついてきた。