奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
「義兄さん、ゴメンね。梨音もらっちゃって」
「京太さん、もう嘘は止めて!」
「だって、僕は知ってるもん。梨音のここにホクロがあること」
京太は乳房の少し上あたりをトントンと指さした。
確かに下着で隠れるあたりにふたつ並んだホクロがあるのは奏が一番よく知っている。
この瞬間までは、奏しか知らないと思っていたことだ。
「信じて! 奏さん、私を信じて!」
梨音の悲痛な声がやけに耳障りだった。
「出ていけ……」
奏が出した言葉は、梨音に向けた残酷な言葉だった。
「出て行ってくれ! 二度と……顔を見せるな!」
「奏さん!」
梨音がさっきより強く奏の腕にすがってきたが、彼は払いのけた。
「ふたりとも許さない! 二度と俺の前に顔を見せるな!」
梨音と京太に背を向けると、奏は玄関から出ていった。