奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


(頭の中がごちゃごちゃだ)

奏は実家から家政婦を呼んで、取りあえず室内の掃除を頼むことにした。
昔から間野家に通っている家政婦は信頼できるし、奏の好みもよくわかっている。

掃除だけでは気分がおさまらない奏は業者を呼んで、寝室の模様替えもすることにした。
あの日、京太がこの部屋にいたことを思い出すだけで胃がキリキリと痛む。

(いったいなんのために……)

いくら考えても、奏の中でパズルのバラバラなピースがきっちり収まらないのだ。
京太がわざわざ奏と梨音の中を引き裂こうとする理由もわからないし、梨音に横恋慕していた様子はなかった。
梨音との関係を壊して喜ぶ人間がいるとも思えない。

(カギは京太か……)



出張していた分だけ仕事は溜まっていたから、翌日から奏はフル回転で働いていた。
相変わらず気分は鬱々としていたが、休むわけにはいかない。

そんな時に、マンションの掃除を頼んでいた家政婦が奏に面会を求めてきた。
会社にわざわざ来るほどの用事があるとは思えなかったが、模様替えに不都合でもあったのかと副社長室に通した。

「お仕事中、申し訳ございません。奏さま」
「なにかあったのか?」


< 58 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop