奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
『義兄さんなの?』
「うちの会社を辞めてまで、ブリスベーンで会社を立ち上げる必要があったのか?」
奏はいきなり疑問を投げかけた。
『へえ~、今さらだね。僕が邪魔じゃなかったの? 間野家じゃ厄介者だったから、いなくなってよかっただろ』
「どうしてそんなふうに考えるんだ。京太のポジションだって用意していたのに」
『義兄さんのスペアはごめんだね』
「スペアって……」
京太の考えが伝わってくると、奏も言葉を失った。
そんなふうに義弟が考えていたとは思ってもいなかったのだ。
『もう僕は間野家とは関係ないんだ。自分のやりたい仕事をやらせてもらうさ』
「そんなことのために……間野家との関係を絶つために、お前はあんな嘘をついたのか?」
『ハハハッ、やっと気が付いたの? あれからかなり時間が経つよ』
電話の向こうで、京太は大きな声で笑いだした。
「お前に確認したかったんだ。これは母さんが仕掛けたのか?」
『当たり前じゃん』
やはりと思うと、奏はやり切れなかった。
『敦子さんと契約したんだ。僕の自由と引き換えにね。』
「自由?」
『間野家にこれ以上は縛られたくなかったんだ。僕はモノじゃない。親たちの都合で人生を振り回されてたまるもんか』
「京太、お前……」