奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~



翌朝は腫れぼったいまぶたが気になったが、仕込みに間に合う時間に店に下りた。

「おはようございます」 

梨音が厨房にいた小暮家の人たちに挨拶をすると、奈美がいきなり大きな声を張り上げた。

「は~い、注目! 緊急家族会議を開きま~す」

その声を聞いて、野菜を洗っていた章子も敏弘も何事かと顔を上げる。
すぐに調理台の周りに4人が集まった。

「では、今日の会議のお題は、梨音ちゃんからです」

奈美が梨音を見つめた。『隠さずに行ってしまえ』とその目が告げている。

「あの、私、赤ちゃんが出来ました。いえ、出来てました」

「はあ?」

敏弘はピンとこない顔で首をひねっていたが、章子はすぐに怒り出した。

「あの、クズ男の子かい」
「お義母さん、言葉悪いよ」

奈美が梨音を気にしてたしなめようとしたが、章子の怒りは収まらない。


< 66 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop