奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~

一年後、間野コーポレーション主催のコンクールが開かれる時期になった。
敦子は後輩の教え子で、前年に奨励賞を受賞した少女を思い出していた。
才能の片りんを見せた春名梨音に再会するをとても楽しみにしていたのだ。

(もっと上手くなっていればいいけど)

去年よりどれくらい進歩しているかで、敦子がスポンサーとなって英才教育を受けさせるかどうか判断しようと思っていたのだ。

コンクール当日、奏もなんとなく会場へ足を運んだ。
去年の姿が印象に残っていたので、梨音の演奏をもう一度聞きたいと思ったのだ。

(あの子、なに弾くのかな)

去年の演奏はまるで蝶々のようだったと記憶している。
ピアノと戯れているようにも見えて、観客席も楽しくなるような演奏だった。

(きっとピアノが大好きなんだろう)

奏も音楽は好きだった。
母親にピアノの稽古をしろと言われた時は断ったが、他人の演奏を聞くのは大好きだ。
幼い頃から様々な演奏を聞かされて育ってきただけに、耳は肥えている。

音楽教育に煩い母親が、どうやら春名梨音を気に入っているのは感じていた。

(母が教えたら、あの子はもっと上手くなるだろうな)

何となく間野家のリビングで梨音がピアノを弾いているイメージが湧いた。

(今年はどんな演奏か、楽しみだ)

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