奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
「これに、奏さんの結婚が決まったと載っています」
「はあ?」
我ながら白けた声が出た。
「俺が結婚? 冗談だろ」
「社長令嬢でピアニストの方との婚約がお決まりになったと、奥様がインタビューでお話しになったようです」
このタイミングでなんてことをしてくれたのかと、奏は頭を抱えたくなってきた。
「なにを考えてるんだあの人は……」
「恐らく、京太さんが退社なさったので、後継者として盤石な体制を作ろうとなさっているのではありませんか?」
まだ父親も健在でバリバリ働いているし、まだそんな時期ではないはずだ。
「いい加減にして欲しい」
奏は怒りを通り越して、呆れ果てていた。
「もし他のマスコミや取引先から問い合わせがあった場合は、どのように対応いたしましょうか?」
守屋なら冷静な判断をしてくれそうから、この件は任せようと奏は決めた。
「母の早とちりで、全くその様な事実はないと答えておいてくれ」
「わかりました。否定しておきますし、今後はこのような記事は出ないように手配いたします」
「ありがとう」