奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
許しを請うアリア
梨音は奏が『日暮亭』に姿を見せた日から、昼間は敏弘と奈美のアパートで過ごし夜になると店の二階に戻る暮らしを続けていた。
妊娠中の彼女には、精神的にも肉体的にも厳しい日々だった。
あまりにも梨音の顔色が悪いので、とうとう章子から『有給休暇』だと言われて休むように言われたくらいだ。
店の二階に籠った梨音は、つい奏のことを考えてしまう。
(奏さんが、私を探している?)
その理由が、梨音にはわからない。
奏からは、京太とあやまちを犯したと誤解され『二度と顔を見せる』と言われたのだ。
ふたりで長い時間をかけて育ててきた信頼も愛情も、あっという間に壊れてしまったはずだ。
常連の国広や坂上からの情報では、梨音のことを尋ねたり『日暮亭』の様子を伺ったりしている人物もいるらしい。
(どうして?)
梨音には、いくら考えても答えは見つからなかった。