奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
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奈美が病院の入り口まで行くと、敏弘が壁にもたれていた。
病院に行くと連絡はしておいたが、まさか迎えに来てくれるとは思ってもいなかった。
「敏弘!」
奈美が駆け寄ると、敏弘がホッとした表情を見せた。
「来てくれたんだ」
「だって、電話一本架けてきたきりだから心配するだろう」
「ゴメンね」
ふたりは敏弘の車までゆっくり歩いた。
奈美は夫に梨音の状態や奏のことを聞いて欲しくてしゃべる続ける。
「どんな男かと思っていたんだけど、眠ってる梨音ちゃんに謝り続けているんだよ。聞こえてないだろうにね」
「そうか……」
いつも以上に敏弘は無口なままで、奈美の話を静かに聞いている。
「あの人、どれだけ梨音ちゃんを探していたんだろう」
立派なスーツを着ているというのに、随分疲れた顔をしていた。
「梨音ちゃんをひどい目に合わせた奴に会ったらあれこれ言ってやろうと思っていたけど、あの姿を見ちゃったら言葉にならなかったの」