凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
積乱雲
 小窓から見える右翼の先端で光る緑色のライトをぼんやりと眺めながら、私、新川菜乃(しんかわ なの)は、ふわあ……と大きな欠伸をした。

 夜のフライトは青空と雲の幻想的な景色を見られないのが残念だが、その代わり眼下に広がる百万ドルの美しい夜景が楽しめる。

 通路側の席に座る男性は数分前から小さな寝息を立てている。睡眠の邪魔をしないようにと、シートに背を預けて沖縄に到着してからの段取りをシミュレーションした。

 二十時五十分着予定。荷物は預けていないし、那覇空港からタクシーを利用してホテルまで十分。何事もなければ二十一時半にはのんびりできるかな。

 世界で五番目に乗降客数の多い空港、空の玄関と呼ばれる羽田空港で、私は大学卒業後からグランドスタッフとして働いている。
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