凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
『椎名さんはしてあげたくてしたことなんだし、なにかされることは期待していないんじゃない?』

「それはそうなんだろうけど」

『菜乃は尽くすタイプだからそのままにはしておけないか』

 尽くす、という定義がいまいちわからない。

 好きな人には喜んでほしいし、笑顔にするためならなんだってしたい。それが尽くす? だったら椎名さんが私にプレゼントをくれたのは尽くすとは違うの?

 こういうのを考え出すとキリがない。頭を軽く振って、スピーカーモードに切り替えた。

 カウンターにスマートフォンを置いて作業の続きを再開する。

『椎名さんの好みがわからないし、なにかあげるといってもねえ』

「そうなの。考えてもなにも思い浮かばなくて」

 茹でて水切りをしたほうれん草を包丁で切る。

『菜乃なにか作ってる?』

「常備菜」

『あ、手料理ご馳走したら?』

 危うく包丁を取り落としそうになった。心臓が慌てた音を立てている。

「付き合ってもいないのに手料理はないでしょ。潔癖症の人だったら恐怖でしかないよ」

『早く付き合えばいいのに』

 勝手なことを言う姉に盛大な溜め息を漏らす。
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