凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 ちょっと作りすぎたから今夜の酒のつまみにしようかな。

 英会話レッスンが終わったらワインでも買いに行こうと思いつき、気分が上がってきたときだった。カウンターに置きっぱなしにしてあるスマートフォンが振動する。

 さっき姉と電話をしたばかりだから、考えられるのはひとりしかいない。

 激しく心臓が鼓動し始めて、どうにか静めようと一度大きく深呼吸をした。

「はい、新川です」

『今話せる?』

「大丈夫です」

 いつもより声の通りが悪いような気がする。

「風邪ひきました? 声が掠れていません?」

『寝起きだからかも』

 そう言って、電話口から離れたところで椎名さんは何度か咳払いをした。

 ロンドンとの時差は八時間。こっちが十四時を回っているから向こうは朝の六時だ。

 もしかして起きてすぐ電話をくれたのだろうか。心臓が先ほどより波打って呼吸がしづらい。

「……おはようございます」

『おはよう』

 ダメだ、このやり取り。まるで恋人同士のようで悶絶する。

 その場にうずくまり、額に手をやって目を瞑った。
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