凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 唇を噛みしめていると女将が再び席に戻ってきた。親しげに「ねえねえ」と声を掛けられて戸惑う。

「朱莉のお友達よね?」

 椎名さんに続き、衝撃的な発言をする女将に唖然とする。

「え……あ、そうです」

「やっぱりそうよね。綺麗なお顔だからよく覚えていたの。今日はお連れの方がいたから、声を掛けるか迷っていたんだけど」

 女将は微笑を浮かべたまま椎名さんをチラリと見る。

「朱莉にも、こんな素敵なお相手がいたら安心するのに」

 椎名さんはどう反応していいのか、珍しく困惑した表情でいる。私が隠したいなんて主張しなければ、すぐにでも自己紹介しただろう。

 彼に迷惑をかけている自分を情けなく思った。

 椎名さんから自分に興味を移させようと口を開く。

「すみません、朱莉ちゃんからチラッとうかがったんですけど、どうして早く結婚してほしいと考えているんですか?」

「あら、あの子そんな話もしているのね」

 頬に手をあててバツが悪そうに笑う。

「朱莉はね、私が四十過ぎてから授かった子なの。私も主人も還暦を迎えているし、いつなにがあってもおかしくないでしょう? 頼れる兄弟はいないし、心配なの」

「そうだったんですね」

 我が子を大切に想う母親の心情に胸が痛くなった。すれ違っているのが悲しい。
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