凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「研修期間のとき、新川さんにはお世話になりました」

 一昨年までパイロット候補生だった彼は、研修期間中のグランドスタッフ業務で彼女と一緒に働いていたという。

 なるほど、と胸のつかえがスッと下りたのも束の間。

「相変わらず綺麗ですね……」

 二階堂は目を細め、まぶしいものでも見るかのようにしている。その瞬間、ぶわっと敵対心に火がついた。

 俺のライバルになるのなら受けて立つ。

 好き勝手言って先に動き出した二階堂の隣を歩きながら、鎮火できそうにない感情を持てあます。

 自分の中にこんな熱いものが秘められていたとは、俺自身知らなかった。

 初めての経験に不思議な気持ちになりながら、どんどん新川さんに近づいていく。

 彼女の表情がはっきり確認できる距離まできて、違和感を覚えた。

 顔色が悪くないか?

 好き通るような肌が青白い。心なしか笑顔に元気もない。

 体調でも悪いのだろうか。先ほどのメッセージには一言もそんなことは書かれていなかった。

 目が離せずにいると、新川さんが胸に手をあてて重苦しい息を吐き出す。考えるより先に身体が動いていた。
< 134 / 248 >

この作品をシェア

pagetop